租税全書
租税全書
完売しました

林 正明 訳述
財政史研究会 編
霞出版社 発行

本書は、明治6(1873)年夏(旧暦6月頃か)林正明によって、求知堂蔵版として岡田屋から出版された、租税に関する当時としては纏まった知見であろう。
当初、明治維新政府は、徳川幕府から財政権の授受に失敗し、零からの出発となったが、明治4年7月、廃藩置県を実行し、統一国家を実現、同年9月には、田畑勝手作を許可、同年10月には、岩倉具視らを海外へ派遣する等、近代化の促進に当たっていた。
このような状況のもとで、林は、幕末、アメリカへ留学、帰朝後、太政官正院、司法省、そして大蔵省へ出仕し、近代化の波に乗った。
当時、大蔵省では、旧制度の租税制度を壊しながら、近代化に対処すべく税制の確立に懸命であった。明治6年7月、大蔵省は、地租改正条例を公布し、一連の作業を開始することとなる。
ところで、本書冒頭で、租税の何たるかを明らかにして曰く。
「夫レ租税ハ、政府人民ヲシテ其財産ノ内ヨリ若干ノ金銭ヲ官庫二納メシメ、之ヲ国用二充ル所ノモノナリ」と。
当時の大蔵省では、合衆国収税法が翻訳されており、これらを併せて、近代化に対処する姿勢が見て取れる。また、構造改革が問われている現在、財政上では、特に税制が政策的に運用されている現在、(租税特別措置法を見よ。)本来の負担体系が壊れていないかを検証する意味でもまた、元にかえって見る必要があろう。言い遅れたことではあるが、今流に言えば、税制改正勧告書とでも言えよう。
以上の観点から見ても、本書の意義は明らかであろう。

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